動的(DLS)・静的(SLS)光散乱式粒度分布測定装置
シーラス社動的・静的光散乱式粒度分布測定装置 NanoDS
レーザー回折・散乱式粒度分布測定装置のパイオニアシーラス社(フランス)は、革新的なナノ粉末の粒度分布測定装置「NanoDS」を開発・販売しました。
NanoDSは動的光散乱式(DLS)と静的散乱式(SLS)の2つの散乱テクノロジーをひとつの光学系システムに統合した最初のナノ粉末粒度分布測定装置です。
これにより、0.3nmから10μmまでの広い測定半全体での正確な粒度分布測定が可能となり、動的光散乱式のみを使用する装置が持つ多くの不足を解消します。
NanoDSの主な特徴:
ユニークな光学テクノロジー
デュアル散乱光テクノロジー現在主流の動的光散乱式は、単分散性や一峰性、または細かい粒子の測定には効果的ですが、数ミクロンの大きい粒子や複数の粉末をブレンドしたサンプルの測定では、うまく機能しないことがあります。この技術的な限界を解消するため、シーラス社は動的光散乱式(DLS)と静的光散乱式(SLS)をひとつの光学系で測定できるNanoDSを開発しました。NanoDSでは、測定するサンプルが凝集していても、多峰性の分布を持っていても、一台の装置でサンプルの特徴をつかむ結果を得ることができます。この革新的な技術により、ユーザは0.3nmから10μmまでの広い測定範囲全体での正確な精度と再現性を得ることができます。
マルチアングルテクノロジー現在の市場において主流の動的光散乱式粒度分布測定装置は検出器を90度に固定していますが、希釈しない高濃度のサンプルやより細かいサンプルによる後方散乱光をうまく捉えることはできません。
NanoDSでは、「マルチアングルテクノロジー」を持つ最初の動的光散乱式粒度分布測定装置です。「マルチアングル機能」では検出器の角度を10°から150°の間で任意に設定(1°刻み)することができるので、サンプルごとに最適な検出器の角度で測定することにより、より精度の高い測定結果を得ることができます。
再現性 0.5~1%
ナノ粒子の特性を知るには、測定の再現性が最も重要な要因となります。NISTの100nmのポリエチレン粒子にておいては、NanoDSの測定再現性は0.5%です。
また、NanoDSでは下の特長により、高い再現性を維持することができます。
- ノイズが非常少ない(60Photon/s)新しいPMT技術をベースとした高性能光子カウンターの採用
- 優れた機械的安定性
- 固体半導体レーザーの採用
- マルチアングルテクノロジーによるSN比の改善
固体レーザーダイオード
NanoDSは固体半導体レーザーダイオードを光源に採用しています。レーザーダイオードはガスレーザーと比較すると長寿命(約3倍)で、メンテナンスや定期的なガスレーザーの交換によるコストを抑えられます。また、ウォームアップ時間も短く、電源投入してすぐに測定を開始できます。また、レーザーダイオードは温度安定性が高いので、測定の再現性の改善も期待できます。
ユーザフレンドリーなソフトウェア
測定と分析は、ユーザフレンドリーなインターフェイスを持つ専用ソフトウェア「ナノエキスパート」を介して、数回のクリックで直感的に操作することができます。
リアルタイム3Dミミックスクリーンにより、測定プロセスのすべてのステップと可動式検出器の位置を簡単に視覚的に確認することができます。ナノエキスパートは最新のウィンドウズOSに対応しています(※1)。
入力した測定条件は標準操作手順(SOP)に登録でき、登録したSOPを選択することで測定条件を呼び出すことができます。
測定結果はソフトウェアに内蔵されているデータベースに自動的に保存されますので、データ管理や測定結果の比較を簡単に行うことができます。エクセルとPDFファイルに出力することができます。
スマートなデザイン
NanoDSは、DLSとSLSを統合した装置の中で最もコンパクトな装置です。本体サイズが小さいので、設置スペースの省スペース化に役立ちます。また、重量は14kgですので、持ち運びもできます。
また、消費電力も少なく、機械的安定性に優れていますので、通常のメンテナンスも不要です。NanoDSはコストとメンテナンス時間の削減に有効な装置です。
トレーサビリティ
NanoDSは粒度分布測定装置のISO13321と13322基準に準拠していますので、異なる場所に設置された機種間でデータの比較が可能です。また、医薬品業界向けに21CFR Part11にも準拠しています。
シーラスが提供する標準サンプルとSOPを使用することで、簡単に装置の状態をチェックすることができ、測定結果の信頼性を確認すること
また、標準操作手順(SOP)を内包していますので、測定条件の管理が簡単に行えます。
製品仕様
パラメーター | 仕様 |
---|---|
測定範囲 | 0.3nm to 10μm |
サンプル濃度 | 40Vol%以下 |
再現性 | 1%以上 |
使用技術 | 静的光散乱式(SLS)とマルチアングル動的光散乱式(DLS) |
Scattering angle | 10°(前方散乱)to 150°(後方散乱),角度分解能は1° |
光源 | レーザーダイオード 638nm-25mW |
サンプル使用量 | 3mL |
検出器 | 高感度光子カウンター(PMTベース) |
測定時間 | DLS:約15秒、SLS:約120秒 (測定するサンプルの特性や、測定条件によって変動します) |
測定温度 | 25°C |
使用キュベットタイプ | 有機溶媒対応のガラス製、プラスティック製 |
環境温度 | +10 to +40°C |
ウォームアップタイム | 2以内 |
本体寸法 | 幅:341mm,高:218mm,奥:533mm |
本体重量 | 約14.5kg |
梱包サイズ | 幅:500mm,高:300mm,奥:690mm |
梱包時重量 | 約25kg |
オペレーティングシステム | Windows 7 32 & 64bits,XP Pro 32 bits |
コンピュータ推奨構成 | RAM 4GB,1 port USB 2.0 for the device |
電源 | 100V/60Hz-230V/50Hz,60W |
ソフトウェア ナノエキスパート | ユーザ設定角度にて複数測定実行。 測定アルゴリズムにCumulantとContinを使用。 SOPと測定結果は内蔵されているデータベースに保存。 エクセルとPDFに出力。 |
Metrology Std. | FR21part11対応,ISO 13320 and 13321,ISO 22412:2008準拠 |
レーザー安全クラス | Class I compliant EN 60825-1:2008 & 21 CFR-1040 |
EC regulatory std. | EMC:directive 2004-108/EC Electrical Safety:directive 2006/95/EC |
同梱品 | USB 2.0 cable,ナノエキスパートソフトウェア(CDROMまたはUSBメモリ) |
シーラス標準粉末キット (オプション) | NIST 対応 100nm ラテックス球形サンプル(定期確認用) |
※全てのパフォーマンスは、サンプルに依存します。
ナノ粒子測定の原理:
概要
NanoDSは、大きいサイズの粒子や多分散系のサンプルの測定結果の信頼性の改善のために静的と動的光散乱式を統合しました。静的光散乱式は散乱光の空間依存性に基づきます。DLSモードでは、散乱光は時間依存性です。これらの散乱光の異なるアプローチは、本書で我々が開発した2つの異なる理論的な側面に基づいています。
ブラウン運動の起源
流体が熱を内包するため、流体分子が停止した粒子にランダムに衝突します。そのインパクトが粒子を動かします。
液体に熱が加えられたときに液体の分子は早く動きます。このとき、大きい粒子のブラウン運動も激しく起きます。同様に、液体の粘度を下げると、より分子は簡単に動くことができ、結果的により多くの粒子の運動がおこります。粒子が大きすぎる場合、分子によるランダムな衝突は全く気が付きません。
スペックルパターン
光源によって粒子は光を散乱します。この散乱光は、この光強度の変動の中で、周囲にある粒子によって、強めあう干渉か弱めあう干渉か、どちらかの干渉を受けます。この強めあうか弱めあう干渉の合計がスペックルパターンを生みます。粒子のサイズによって、光強度の変動の比率が発生します。
Figure 1:強めあう干渉と弱めあう干渉とスペックルパターン
相関関数
粒子の動的な情報は、実験の間に記録される光強度の軌跡の自己相関に由来します。
Figure 2:大きい粒子や小さい粒子の散乱光強度の時間空間相関関数
短い時間の後では、相関関係は高いままです。これは、粒子がもともといた初期の状態から大きく移動する時間がなかったためです。それゆえ、非常に短い間隔で比較した場合、2つの信号は、本質的に変動がありません。
時間が長くなると、相関関係は急激に減衰します。これは、長い時間が経過すると、最初と最後の状態の散乱光の光強度の間には相関関係がないことを意味しています。
2次自己相関関数は下記とおり光強度を追跡することで生まれます:
相関曲線からサンプルの多くの情報が得られます。
相関が著しく減衰し始めた時間はサンプルの平均粒径を示す。曲線が急なほど、サンプルはより単一分散となります。
Figure 3:22412ISO規格による、規格化された自己相関関数
アインシュタインストークス式自己相関関数による移動拡散係数の決定は、粒子径を決定することができます。
DLSによる粒径測定でのアルゴリズム
キュムラント最も一般的な方法のひとつがキュムラント法です。前の指数関数の和を足していくことで、以下のとおり、システムの相違についてより多くの情報を導き出すことができます。
Laplace inversion 逆ラプラス変換自己相関関数を測定する方法は、Steven Provencher氏によって開発されCONTINとして知られる逆ラプラス変換を通して到達します。相関関数の複数の減衰に一致することで粒度分布が得られます。
CONTIN分析は、キュムラント法では解決できない複数の異なった分散を持つ、多分散性、また多様なシステムに対して理想的な方法です。
2つの異なる分布をもつ場合の解決はおおよそ5つかそれ以上の要素であり、2つの異なる分布の間の相対的な光強度の違いは、1:10-5以下です。